モンスターハンター
『護符』
無骨な武具が雑多に積まれた小部屋の中 火薬、大砲の弾、石弓の矢、長剣短刀長槍… 非生産的な道具のみは一通り揃った部屋の中は 先ほどから不定期に響く振動と咆哮に支配されつつあった そんな中で一人の男が黙々と傷んだ剣の手入れをしている。 咆哮と振動、要塞の外壁の一部が崩壊する音… 「そろそろかな。」 腰を上げようとした時、女が一人部屋に入ってくる 長い刺突用長槍を抱え肩で息をしている女に 男は無言で水と食料を差し出す。 「やつはどうだい?」 一気に水を飲み干し一息ついたところで女は 「ダメかもねぇ。二つ目のバリケード突破されたよ」 椅子に深々と腰掛ける男 「そうか。他の皆は?」 「なんとか皆無事。必死に『逃げ回りながら』攻撃してるよ」 女は苦笑いしながら男に手渡された肉にかぶりつく 「ねえ」 「ん?」 「ここを突破されたら…どうなると思う?」 解りきっている。 この要塞と街までの間には大型龍に対する備えはほとんど無い。 文字通り「最後の砦」である。 「んー。街まで一直線に到達。街で破壊の限りを尽くしてお帰りあそばす…ってとこかな。」 「いやだね…。」 「ま、戦争と違って略奪・放火・女子供の陵辱その他諸々が無い分後腐れ無くて良いんだがね。」 「たしかにそうよね。だけど…。」 手にしていた槍に目を落とす女 「今までやってきたこと全部意味が無くなっちゃわない?」 飛龍の眷属狩り 領主の姫君の無茶な依頼 街道を守る守備隊への協力 今まで仲間と一緒に協力して戦ってきた。。 「なんとかしなきゃね。」 「ああ。まだ負けた訳じゃないし、負けてやるつもりもないさね。」 そこに慌ただしく伝令の猫型の獣人が駆け込んでくる 「もーだめニャー!『らおしゃんろん』に三つ目のバリケードも突破されそうニャー!!」 一際大きい振動と破壊音が部屋を支配する。 「三つ目も突破…か。」 男が破壊音に驚きまん丸に目を見開いた獣人の首根っこをつかむ 「守備隊長に伝令を。『守備隊の総員街への撤収を求む』伝令後は街まで走れ。」 「あなた方はどうするニャ?」 「自分達ハンターはぎりぎりまで残ってやつを食い止める。まだ最終兵器も残ってるしな。」 コクコクと首を振った獣人は部屋から駆け出そうとするがクルリと向きを変え男と女の所に戻る。 「?」 腰の小さなポーチからなにやら取り出し男に差し出す獣人 「これ。猫の神様のお守り。あげるニャ」 マタタビの葉で作った可愛い4つの護符だった。 「死んだらだめニャ。」 駆け出す獣人。思わず目を合わせ微笑む男と女 「さて、、と」 「頑張りますか。。」 「猫ちゃんの為にも」 「俺らの報酬の為にも」 それぞれの得物を手に二人が歩き出す 「そうそう『最終兵器』の起動やらせてよ」 「いいぞ。タイミング間違えるなよ」 巨竜『老山龍』の足音が段々と大きくなる…。 -完- |